学校の勉強は抽象的なことが多いです。算数一つとっても抽象的です。よく分からないアラビア数字を使って計算をしなければなりません。ドングリなどを使えば簡単に分かることも、抽象化されている数字をつかっているがために分からず、苦手意識を持つ子もいます。

 たとえば、5歳と4歳の子は何歳違い?。と確認すれば即答できる子も、5と4がいくつ違うのかという問題になると考える必要が出てきます。そして、これは普通です。

 また、10円玉が4つでいくら?ときけば、「40円」と答えられる子たちが、10+10+10+10は「14」と間違えてしまいます。これも1年生のこの時期は仕方がないのです。

 一番大切なことは普段の生活でたくさんの具体的な体験をしておくことです。たくさんの具体的な数字に触れて、犬が5匹も、牛が5頭も、鉛筆が5本も、子どもが5人も、飴が5個も、そして、5歳も、抽象化するとすべて同じ5で表せるということを腹落ちさせてあげることが大切です。子どもに「抽象化しなさい」と言ってももちろん意味はありません。

 ストック(知識や経験)がたくさんあれば、学校で先生が教えてくれたときに、自分のストックから引っかかるものが出てくる可能性も高まります。学校の勉強は算数に限らず、日常生活を抽象化して整理しているだけです。たくさんのストックがあれば、それだけしっかりとした理解にたどり着きやすくなります。そして、学校で習った抽象的なことを抽象的な事柄のままにせず、日常生活の中で具体的に落とし込むことも大切です。理解が深まるだけでなく、学校の勉強と日常生活のつながりが見つかれば、勉強をする意義が分かってくるからです。

 算数は、ほんらい文章題の方が具体的である分、イメージがしやすく簡単なはずです。机上の勉強だけに終始して、(抽象的な)計算問題しかやっていないと、抽象的な事柄と具体的な事柄を分けて考えてしまうため、文章題が出来ないという事態が起こりえます。

 改めて考えてみると、具体と抽象の往復作業は小学校入学から徐々に始まっています。未就学児の間は何かうまくいかないことがあっても、手取り足取り具体的に誰かが解決してくれました。それが小学生になると先生の言葉による抽象的な指示があり、それを自分で具体的な行動に落とし込む必要があります。抽象的なことを具体的なことに結び付けられるかどうかが、小学1年生が乗り越えなければならない壁の本質なのかもしれません。