覚えるときは意味を与えると覚えやすいです。漢字は大人の感覚だと意味があるものなのですが、小学校低学年の子にとっては意味がないことがあります。意味を意識せず処理をしているだけのことがあるのです。漢字(や熟語)を覚えるとき、意味を意識すると覚えやすいです。もちろん、最初は面倒です。でも、意味を意識することが何よりも大切なのです。意味を意識せずに、漢字練習をしてもすぐに忘れてしまいます。「こんなに頑張っても覚えられない」と無駄に自信を喪失するだけです。

 私は漢字の宿題を見てあげるとき、細かい点は見ていません。そこは学校の先生が口やかましく見てくれているからです。その代わり、私は「この言葉の意味ちゃんと分かってる?」と確認をします。学校の先生が一人一人にそんなことを確認する余裕はないですからね。そして、繰り返しになりますが、意味を理解していないと漢字を簡単に忘れてしまうからです。

 何度同じことを言っていてもあまり効果がないので、今週は子どもたちに意味がないことを覚えてもらいました。下の11桁の数字です。

20233611919

 1分くらい与えたので頑張って覚えていた子もちらほらいました。そのままでは翌日には忘れてしまいます。でも、上記の数字も意味を与えれば簡単に覚えていられます。「2023年は寒い(361=19×19)」。これだけです。2桁の掛け算をやっていない1年生には無理ですが、2年生以降の子たちは完璧に覚えました。

 見方を変えれば、「19×19=361」という語彙を持っているという風にも考えられます。語彙を持っているからこそ、2年生以上の子たちは苦労せずに覚えられたのです。漢字も同じです。漢字を習う前に、語彙を持っていたら、学校で習う熟語に意味が出てくるのです。逆に、学校で新しい漢字を習ったときに知らない言葉だらけだと、無味乾燥な数字の羅列をただ覚えるのとあまり変わりません。だから、学校で漢字の学習が始まる前に、基本的な語彙を身に付けさせておいてあげることが大切なのです。

 意味を意識したり、思考を挟んで意味を与えることで、記憶することが圧倒的に楽になります。意味のない事柄は一つ覚えると一つ忘れます。でも、意味がある事柄は覚えれば覚えるほど理解が深まり、記憶が容易になります。だから、意味を意識出来ている子たちは漢字が得意になっていきます。自分の専門分野のことをイメージしていただけると分かりやすいと思います。専門外のボキャブラリーは覚えにくいのに、自分の専門分野であればどんどん頭に入ってきますよね。学生時代に頑張って覚えた英単語を思い出していただいても分かりやすいと思います。最初の100個は大変だったけれど、数千の単語を覚えた後であれば、追加の100個は最初の100個に比べれば圧倒的に楽だったと思います。

 漢字が苦手な子は漢字テストで間違いが多いという表層的な結果を意識して漢字練習をさせるより、語彙を増やしてあげたほうが結果が伴ってきます。