間違えたからといって叱っても出来るようにはなりません。間違えたことをなかったことにしても出来るようにはなりません。間違えたこと、出来なかったことを(大人側が)受け入れて、別のやり方・視点・使ってない知識を探してヒントを出してあげると、出来る可能性が上がります。親がなぜ出来なかったのだろう、どうしたら出来るのだろうと考える姿勢が、子どもの結果ではなくプロセスを意識する姿勢につながります。そして、このサイクルができあがると学びのサイクルを楽しめるようになっていくように感じています。

 漢字の学習であれば、漢字を読めないからといって、すぐに読み方を教えていては覚える量がどんどん増えるだけで、なかなか身につきません。すぐに読み方を教えてやれば、子どもにとって負担が少なく出来たようにも感じられます。でも、それは単なるその場しのぎに終わります。漢字に対して苦手意識を持っている子はさらに苦手意識を募らせます。意味が分からないものを覚えているだけだからです。漢字学習を意味のないパスワードを覚えるようにやらせてはいけません。

 なぜ読めないのか、本当に自力で読める可能性はないのか、どんなヒントを与えたら読めそうか、そういったことを考えてやり、ヒントを与えてあげる。3年生の漢字を教えているときに、「歩道橋」が読めないのであれば、まずは読めるところを読んでもらう。「『歩道』は2年生でやったじゃない」と言いたくなるのをこらえる。全く読めないのであれば、答えを言わずにどうしたら読めるのか考えてあげる。「つい最近、“横断歩道”を読めていた」ことを思い出したら、いまも読めるかどうか確認してみる。「横断歩道」が読めたのであれば、もう一度「歩道橋」にチャレンジをさせる。ここまで教える側が考えてあげると、子どもも頑張ります。

 そして、読めないと決めつけて諦めていた漢字を読めたとき、子どもは自分自身を褒めてやることが出来ます。自信を持てます。出来て当たり前のことを積み重ねても、それは当たり前のことで、なかなか自信にはつながりません。もちろん、全く手掛かりがないこともあります。その場合はやはり教えてあげるしかないと思います。でも、考えてやることに価値があるのです。

 文中に出てくる漢字で自信をつけてあげることも出来ます。「薬局で風邪の薬をもらう」という文章があったとします。自信がない子たちは分からない漢字が視界に入った瞬間に読むのを諦めることが多いです。そして、そんな子の親はどうもすぐに読み方を教えている傾向が多いように感じています。そこをぐっと堪えて、「読めるところだけでいいから」と声に出して読ませてやると、意外と読めてしまうことがあります。仮に「風邪」が読めなかったとしても、「何の薬だと思う?」と問いかけてあげれば、たいていの子は読めてしまいます。そして、最初、読めないと思っていたのに、読めてしまったギャップの大きさが自信につながります。そして、子ども自身の驚きだけでなく、大人(親)が心の底から「おー!読めたじゃん」って驚きを持ってあげることも大切だと思っています。親の価値観が子どもの価値観であることはとても多いです。

 漢字に限らず、出来るところはすべて自分でやらせてあげる。そういう姿勢が大切だと思います。小学生に出来ないことが多いのは当たり前です。ちょっとできないからといって、すぐに手を貸していては成長のチャンスを捨てることになってしまいます。小学生でも探せば出来ることはたくさんあります。間違えたら褒めてあげましょう。それはチャレンジをした結果です。違うやり方で3回間違えられたら、かなり賢いです!