覚えるということは、字(や音)の羅列を無理やり記憶することではありません。もちろん、そうやって覚えることも出来ます。が、そのやり方だとかなり記憶力がよくても覚えるのがツラくなります。

 私が見ている限り、記憶力自体がさほど優れていなくても、語彙が多く理解力が高い子は覚えるのが早いです。たとえば、下の二つの文章です。

A. きのうのあさ、まっ白いこなゆきがたくさんふった

B. にんちかがくでは、みかいけつの大きなもんだい

 Aに関しては学年に関係なく、私が5回読み上げたらほとんどの子が覚えられました。イメージしやすいからですね。Bも同じようにやりましたが、思った通り1年生は一人も覚えられませんでした。ひらがな(音)の数を計算すると、Aの方が難しいと言えます。でも、Bには、「認知」「科学」「未解決」「問題」と難しい言葉がたくさん入っています。1年生以外ではBを覚えられた子がいました。その子が分からなかったのは「認知科学」だけでした。

つまり、「に」「ん」「ち」「か」「が」「く」「では」「未解決の大きな問題」という風に覚える量を減らしていたのです。こうすれば、覚えなければならない塊(チャンク)は8個にまで減ります。

 語彙が多ければ多いだけ、学校で先生の話を聞いていて理解がしやすくなる所以です。もちろん、理解をするには「てにをは」もしっかり分かっていなければならないと思います。

 ちなみに、文字の羅列だけでなく、数字の羅列でもやりました。

C. 65741398756436

D. 20250321162030

 まず、Cだけをテレビ画面に表示して1分与えました。覚えられませんでした。次に、Dを画面に表示して、30秒与えました。一人だけDを覚えていた子がいました。数字の羅列から意味を見出した子がいたのです。「2025年03月21日16時20分30秒」としたのです。つまり、「今日の日付(2025年3月21日)」「16時」「20分」「30秒」としたのです。1時間後、もう一度、子どもたちに確認しましたが、そのときはみんなが覚えていました。1週間後にやっても覚えていられる子がいるはずです。

 覚えるときは無心になって記号の羅列を覚えるのではなく、頭を使って意味を見出した方が結果的に早いのです。ひらがなカタカナを練習しているときは、強引に覚えて形と音を一致させるしかないのですが、漢字の学習に入ったとき、語彙があまりにも少ないと苦労します。ひらがなカタカナを覚えたように無理やりに覚えきれるものではないからです。漢字学習には意味が必要です。ただただ、心を無にして漢字を何回書いても覚えられないのです。それどころか、すぐに忘れてしまいます。記憶力が悪くないのに「自分は覚えられない」と自ら暗示をかけてしまいかねません。

 私が口酸っぱく、言葉を増やしなさい、イメージしなさいと言っている理由が、子どもたちに今まで以上に伝わってくれていたら嬉しいです。

 コブシの花が奇麗に咲いていました!