トゥモローでは1年生に賢人パズルというパズルをやらせています。いろいろな形のブロックがあるのですが、「あーでもない、こーでもない」と手を動かしていると、最終的には誰もができます。たまたま床に置いたときに裏っ返しになって、さっきまでハマらなかったところにハマって「できた!」ということも起こりえます。そして、「これだけで、できるんだ」という発見が活きた知識になり、自信につながるのです。似たようなことは、子供が一人で積み木やレゴブロックで遊んでいるときに、親が気づかないうちにたくさん起きているはずなのです。逆に、親が手を出しすぎると、「やったー!」「こうすればよかったんだ!」という驚きを伴った喜びがなかなか生まれず、淡々と言われたことを処理するだけで進んでしまうので、私は注意が必要だと思っています。

 さて、未就学児でなくても、小学校低学年の子供は手を使って学べることがたくさんあります。手を使って学ぶチャンスがあるうちに、「自分でできた!わかった!」という体験を増やしておいてやることは大切です。なぜかというと、考えているかどうかは本人以外には見えないからです。親であれば我が子が「考えてないな」ということは一目でわかるとは思いますが、子供たちは見えないんだから「バレるはずがない」と捉えがちです。だから、目に見えて手で触れることができるものを使って、理解する(「こうすればいいんだ!」という)喜びを体感することはとても大切だと思っています。小学校低学年は遊びと学びをいったりきたりしています。学びを遊びの延長と捉えて、考えれば(手を動かせば)分かると思ってくれれば、3年生以降も勉強を楽しんでいけるのではないかと思っています。

 先日、マンツーマンで勉強を見てあげる機会があったのですが、「わかるはずがない」と決め込んでいるのが見て取れました。でも「考えているけど、分からない」と言うんですね。「分からないところや考え違いしているところを見つけて助けてあげたいから、考えていることを全て言葉に出してごらん」と伝えると、本当に困ってしまったようです。それでも、まずは言葉を発してもらいました。

 このときは大きなキューブと小さなキューブを使って数字の関係性について教えていました。大きなキューブは1つで10、小さなキューブは1つで1。要するに、10の位と1の位の話です。1の位が同じ数字を便宜上、親子と呼んでいるのですが、その日まで理解してくれませんでした。目の前で、大きなキューブと小さなキューブを一つずつ並べてあげると「11」だということはわかりますが、「11の親子にはどんな数字がある?」と問いかけると止まってしまうのです。

 それで、「間違えてもいいから何か数字を言ってごらん」と伝えるとなんとか「12」と言ってくれました。それで、11と12が親子の関係になると思うかどうか確認したのですが、ここで再び止まってしまいました。つまり、「12だったら、どうなるんだろう?」と確認作業をしていないのです。しばらく間を置いてから、「じゃあ、キューブを使って12を作ってごらん」と伝えると、難なく12を作ることができました。再び「これって、親子の関係?」と確認すると、「違う」と今度は自信を持って答えることができました。そして、「分かった。31が親子」と自信を持って教えてくれました。その後は、41など他の数字をどんどん私に教えてくれました。大変だったかも知れませんが、喜んで帰宅する姿を見て嬉しく思いました。

 15+10は簡単にできるのに、25–10や25–15をさせると手を使ってしまう。「10」という数字の扱い方(数字の関係)がわかってくれれば、他の子達と同じようにサクッと計算ができるはずです。25–10であれば小さなキューブを10個も引く必要はなく、大きなキューブを1つ引いてやればいいだけですからね。大幅に簡単になるはずです。

 低学年の子供にとって、答えが20以下の計算は覚えて逃げることは可能ですが、数字同士の関係性を理解しておきたいですね。今はお買い物の際に現金を使わなくなってきているので、数字の関係性を教えるのが年々難しくなっているのを感じています。デジタルは理解する過程が終わっている大人にとっては便利なのですが、これから理解していく子供達にとっては理解を阻むハードルになりかねません。五感を使うことにより、学びやすくなる子は少なからずいるはずです。気をつけてあげてほしいです。